活動報告

2022.08.31
◆ 第25回 研究会報告

8月30日(火)18:00-20:00、Zoomによるオンラインで研究会を開催にました。
 
第25回目となる今回は、会のコンセプトと今後の方針を皆さんと確認・共有することができました。今年で活動三年目に入り、研究会の仲間の輪も広がり、より学際的なオペラ研究を目指す会としては嬉しい限りです。それと当時に、オペラ研究の多様性から、多くの研究者が会としてひとつの方向性に従って研究を続ける難しさ──面白さでもあるのですが──を避けて通ることができないと痛感しました。
単に「オペラ台本を読む」といってもどの時代やジャンル、作家を研究の対象としているかに始まり、研究成果をどこに向け、どのように発表するのかについても一様ではありません。オペラ台本を軸に研究する会ですが、セリフの精読から言葉と音楽がどのように連関しているのかなど、台本の読み解き方にも唯一無二の正解はありません。
しかしながら、研究会の発足を決めた際にイメージしていたのがオペラ台本をきちんと読み込むための「読書会」でした。筆者がイタリア留学から戻った時、東京外国語大学・河島ゼミ出身の研究者を中心に開かれていた「神曲を読む会」に参加させてもらいました(そこで「古典」を読む大変さと面白さ、やり方を自然に教わっていたと思います)。近年、「翻訳ソフトで事足りる」から大学での語学学習は見直しても良いだとか、どうせやるなら「使える語学」といった声もよく耳にします。なにをして「使える」と定義するのかという問題はさておき、日本の英文法が欧米列強に対する武器として独自の歩みを持っていること(斎藤浩一『日本の「英文法」ができるまで』研究社)や、アウグスティヌス『告白』訳者の山田晶が述べているように古典をじっくり読むことの大切さを知れば、西洋の文芸を受容するために必要な知識・理解とは何かが自ずと分かると思います。
読書会に話を戻しましょう。読書会で重要なことは、『難しい本を読むためには』筑摩書房(ちくまプリマー新書)の中で著者である山口尚が紹介しているように、読むことは手段であり、目的は難しい文(作品)を理解すること。「面白そうだから選ぶ」「興味のあるテーマ」「同じ著者の別の作品が面白かったから」「誰かが奨めていたから」といった理由で作品を選ぶと失敗しやすいことも山口は指摘します。そしてめったにハズレがないのは、長年多くの人の検討をくぐり抜けてきた作品である「古典」を選ぶことで、メンバーの積極的な参加へのモチベーションにつながると言います。
そう簡単に読むことのできない古典を準備して読む(ねばならない)。イタリアのオペラ(声楽)のジャンル──イタリアの韻文──で音楽との接点を考えたときの古典といえばペトラルカ『俗語断片詩集(カンツォニエーレ)』を置いて他にありません。ということで、今後はおそらく長い航海が始まると思いますが、研究会報告で少しづつ皆さんにも成果を紹介していければと思います。さて、勉強しないと。

森田学

Novità