活動報告

2021.12.28
◆ 第18回 研究会の報告

2021年12月27日(月)16:00-19:00
本年最後となる台本研究会が開催されました。
 
現在、フィレンツェに滞在中のメンバー辻昌宏先生からイタリアのオペラ最新情報の紹介がありました。
今年のベルガモのドニゼッティ・オペラ・フェスティヴァル(ぺーザロのロッシーニ・オペラ・フェスティバルをモデルとしているようで、クリティカル・エディションに基づいた公演を行っている)は、《連隊の娘》、《愛の妙薬》、マイール《コリントのメデーア》が取り上げられています。このうちドニゼッティの師匠であるマイール(マイヤー)の作品を実際に鑑賞した本人から詳細を聞くとこができました。
私たちが一般的に聞くチャンスがあるとすればナポリ初演版(1813)ですが、今回は初演から8年後にベルガモで再演された版で上演されたそうです。主だった改訂のポイントとしては、ロッシーニ風の要素が見られること、ナポリのようにスター歌手を擁さないベルガモでは難易度の高い歌唱技巧が求められる部分がないこと、混声合唱から男声合唱の変更などがあるそうです。こちらの公演はCitta’ alta(旧市街)にある劇場Teatro Socialeでの上演です。
ドニゼッティの2作のオペラは新市街のよりキャパの大きな劇場での上演で、劇場の前に人形劇の舞台を設置し、ドニゼッティ先生とネモリーノが愛のついて語り合う(無料の)出し物も行われていたそうです。フェスティヴァルを町全体のお祭りとして盛り上げる工夫など、上から目線ではなく自然に「オペラって面白いかも」と興味を持たせるような仕掛けもあるのですね。チケットを買った人も、まだ買っていない人もフェスティヴァルをそれぞれのスタンスで楽しめる良い企画ではないでしょうか。
実際にチケットを購入した人には、ピリオド楽器を使用した公演の幕間にピリオド楽器を真近で見ることができたり、劇場前で行われていた人形劇の人形がオペラに登場することで公演をより身近に感じることができたそうです。また、(駅伝の応援のような)小さな旗が入場者には配られ、そこに書かれた詩句が第二幕で合唱が歌う歌詞なのですが、開演前にワンフレーズをみんなでほんの少し口ずさむ練習をして、実際に公演に参加してしまおう!という希望者にとってはワクワクするような企画も用意されていたそうです。もちろん強制ではないし、「こう歌うべし」といった指導的・教育的な態度ではなく、Cantiamo insieme!(一緒に歌おう)といった自主参加型の工夫だと言えるでしょう。
以上のような生のレポートをメンバー一同、楽しく聞きながらオペラについて語り合いました。
 
実際の活動としては、来年は第3幕・第4景から読み進めて行きます。
皆様、良い年をお迎えください!

森田学

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