活動報告

2020.06.13
◆ 第1回 研究会のはじまり。

 原さん、森田さんをはじめとして、計6名の参加からこの研究会は歩みを始めることとなりました。Zoomでの開催ではありましたが、各地から集合(ボローニャを中心にご活躍の方も!)、自己紹介をはさみつつも「いきなり本題」にテンポ良く進んでいきました。
 「イタリアオペラの台本を読み込むこと」を主とする本研究会。これから少しずつ読み解いていく作品はG. ドニゼッティ(1797-1848)が晩年に手掛けた作品『ドン・パスクワーレ』(初演:1843年1月3日、パリ)です。なぜこの作品を取り扱うのか、その点は、研究会の中で参加者が準備、共有した情報からも浮かび上がってくるように思えますため、ここでは以下2つの視点のみにはなりますがご紹介します。

 
 

【作品の背景】
・A. アネッリ(1761-1820)が台本を務めたオペラ『セル・マルカントーニオ』(Ser Marcantonio)が当時はやっていたことから、そのエッセンスをすべて盛り込みつつも時代にマッチした新しい台本を作るようにドニゼッティがG. ルッフィーニ(1807-1881)に話を持ちかけた。
 
・ルッフィーニによる台本が付曲される際、ドニゼッティによってその文言等がいくつも変更されたことから、ルッフィーニがそれに不満を持ち、この作品に自分の名前が残ることを拒否したという経緯があること。
 
・結局、台本作家の名前は”M. A.”とされ、これは当時、パリでドニゼッティのエージェントをしていた”Michele Accursi”とされている。

 

【日本での取り扱い】
・ノリーナのアリアが大学等で頻繁に取り扱われる中、このアリアは対訳のみではなかなか理解が進まない可能性がある。取り上げられる機会が多いこの作品を丁寧に整理していくことは、これからの声楽教育に貢献しうるのではないか。

 
 

 上記は3時間開催された会のうち、冒頭、ほんの数分で共有されたものであり、この作品の前提の共有部分に該当するものです。以降研究会の本編では、森田さんが準備した対訳案をもとに、ドニゼッティはルッフィーニの台本の文言をどのように変更したのか、なぜそのような変更を行ったのか、ドニゼッティによって修正がなされた台本と音楽や演劇との関係性はどうなっているのか、ということを意見しあう場となりました。

 

 今回は第1回目ということもあり、顔合わせならびにこの研究会の進みゆく方向性が共有されたことがとても大きな成果であり、次回以降、本格的な推進が期待されます。

 

 毎月1回の開催を予定しているこの研究会では、次回以降も、『ドン・パスクワーレ』にまつわる様々な資料、参加者の知恵を結集させ、1つ1つ確かな読みを積み上げていきます。

小田直弥

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