活動報告

2021.05.23
◆ 第11回 研究会の開催

5月の台本研究会が終了し、「第2幕・第3場」まで進みました。
 
今日はお茶の水女子大学研究科博士後期課程に在籍中の林いのりさんが原詩・対訳・文法構造の把握や台本と楽譜との言葉の違いを表ソフトを使ってまとめたものを共有画面で示しながら、解説してくれました。
 
全体的な流れを理解するだけであればそれほど難しい表現もなくスラスラと読める場面ではありましたが、自分の力で読んだけれど疑問の残る個所についてきちんと質問し、解決していました。
例えば、「confondersi」という動詞が使われていますが、これは一般的には「混乱する」といった意味の動詞です。しかし、明らかに前後の流れとそぐわない訳になってしまいます。これは「umiliare 恭しく礼をする」といったニュアンスで、楽譜のト書きでは「fare profondi inchini」となっています。
 
また、「osare」は伊和辞典では「あえて~する、おもいきって~する」とありますが、訳語だけでニュアンスを想像するのではなく、伊伊辞典の「avere l’audacia / il coraggio 大胆に~する、厚かましく~する、勇気を出して~する」まで調べることでより実感を持って解釈ができます。
私たちのように外国語として古いイタリア語を学んでいると「oseria」が条件法「oserebbe」であることはパッと理解できるのですが、ネイティヴでもあまり読んだことがないと迷ったりすることが分かって、新鮮でした。その逆もしかりで、ネイティヴが当たり前のように分かることを私たちが違って理解することも充分あるので、常に謙虚に学んで行きたいところです。
 
パスクワーレが「Posto che ho l’avantaggio」という古いことばを使っている点を考えることで、単にお金や地位でなんとかなると上から目線で言っているのではなく、その後のト書き「S’imbroglia (頭が)まごついて」やそこでのセリフ「Anzi」がいかに自然に見る者の笑いを誘うかが理解できるはずです。
ドットーレの「Per tutti i casi dabili」の「dabile」などは辞書に出てきませんが、語源的に想像したり、大型辞典を引くことで「Per ogni evenienza」のようなニュアンスになるところまで辿りつけるでしょう。
 
今から17年くらい前でしょうか、研究会のメンバー原先生たちが主宰していた「神曲を読む会」に参加させてもらったことで、辞書をきっちり引く大切さを学んだことを思い出しました。
 
来月はこの部分の音楽との関わりを見て、先に進んで行きます。

森田学

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