活動報告

2020.12.26
◆ 第7回 研究会の開催

 2020年最後となるオペラ台本研究会が24日に行われました。
 6月から実質的な活動を開始し、月1のペースで研究会を開催しています。(先月の話し合いを含め)第7回となる今回は、第一幕ノリーナのカヴァティーナを扱いました。

 

 まず大学院博士課程でオペラの研究を進める若手研究者が台本の詩句を訳し、韻律面から解説してくれました。また、台本作家ルッフィーニの書いた詩句と作曲家ドニゼッティが書き換えた詩句を比較しながら、ドニゼッティの意図と効果を探って行きました。
 主観的な感想に陥ることなく、19世紀前半のオペラの作られ方(La solita formaや Lyric Form)を台本および楽譜と照らし合わせながら検証して行きます。ヴォーカルスコア(spartito)ではなくフルスコア(partitura)を用いることで初めてオーケストレーションが見えてくること、典型的な形式から外れる書法が作劇法と一致している点、「Col canto」もしくは「rall.」と「a tempo」の言葉と音楽の関係、ドニゼッティが詩句を部分的にメロディに沿うように反復する所と音楽的に求められるセクションに必要なものとして書き加えた詩句の違い、など。楽譜を読み取ることでドニゼッティの意図が浮き上がるようでした。
 またルッフィーニがドニゼッティへのオマージュで挟み込んだ詩句「d’una furtiva lagrima」をあっさり書き直したところも、モチーフが必要とする詩句(イクトゥスの配置)に書き換えていたり、brillareとscherzareの順序、古めかしい表現をカヴァティーナでは用いつつカバレッタではリズミカルでより同時代的な表現へ変更したり。
 読み書きの出来る新しい時代の女性が、本の世界観に縛られることなく、その本を笑い飛ばしつつ、自由に羽ばたくという図式が、自己紹介アリアであるカヴァティーナで明確に現れている点も興味深い点です。実際、アリア前半のカヴァティーナがリリック・フォームの途中で終わるあたりもドニゼッティの意図を感じずにはいられません。

 

 今回は和声や楽器の特性も見ながらかなりしっかりと音楽分析しましたが、外国語で書かれた脚本をしっかりと読み込みために、音読やテキスト分析も丁寧にして行きます。
 2021年も引き続きよろしくお願いします。

 

森田学

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