活動報告

2020.08.08
◆ 第3回 研究会の開催

Librettistica italianaの8月研究会を8日(土)10:00-12:30にZoomで行いました。

 

今回も参加者は全国各地からアクセスし、それぞれの視点から主体的な議論が交わされる会となりました。

 

“voi”をめぐって、”tu”と”Lei”との心的距離の違いを教科書的ではなく、実感として共有していく時間は、とても貴重と感じました。tuを基調とした流れの中で、ふとvoiが出てきたとき、やはり着目してしまいます。考えるべきはそこで何が起こっているか、ということだと思います。

 

とある先生は、これまでの話しの流れとは異なる、あらたまった話しをするために”voi”という言葉を使ったのではないか、またとある先生は、丁寧だが親しさも込めた呼び方にしたかったのではないか、など…。

 

このような意見を総合しながら研究会の場では”voi”という単語のもつテリトリーやベクトル、質感が浮かび上がってきたように感じました。

 

ドイツ語のオペラ作品でも、例えば『死の都』(E. W. Korngold)を思い浮かべると、パウルとマリエッタの最初の会話は”du”を基調にしていますが、パウルがマリエッタを「マリー」と呼び間違えたところで”Sie”が使用されるようになり、パウルとマリエッタの心の距離感がすっと変わったことが分かります。(ここではパウルとマリエッタという関係に加えて、パウルの中でのマリーとマリエッタ、夢と現実の関係も秘められているように感じます。)

 

専門家が結集した研究会だからこそ、ピアノ弾きとしても、作品との向き合い方を強く考えさせられます。

小田直弥

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