詩句のイタリア語

イタリア語のオペラや歌曲の歌詞はほぼ韻文で書かれています。響きやリズムによって生み出されたことばの世界では、ことばの意味を理解する(日本語に訳せる)だけでは十分とは言えません。なぜそのような語順になっているのか、その表現や単語、形式をなぜ選んだのか、などについても考えてみたいものです。対訳を読んでみたけれどうまく理解できない場合、その理解を深めるための手がかりも紹介していければと考えています。

2020.06.21
イタリア語の辞書について

イタリア語の辞書でお勧めの一冊を尋ねられることがよくあります。声楽専攻の学生など、オペラ台本や詩を読み込みたい人にはやはり語彙数最大を誇る小学館『伊和中辞典』をお勧めしています。(2020年6月時点で税込み7260円)
他にも用途に応じて、自学者に向けてより詳しい解説がなされた白水社『プリーモ 伊和辞典』や三省堂『ベーシッククラウン伊和・和伊辞典』、古いイタリア語を読む時に助けになることもある白水社『新伊和辞典』(恐らく古本で格安)などをまずは購入してみるというのもありだと思います。
 
これまで辞書を引いていてぴったりの訳語が見つからなくて苦労した経験がある人も少なくないでしょう。このような場合、伊和辞典の訳語だけでなく例文を見ながら用法や単語のニュアンス、意味のテリトリーを掴むように心がけると良いでしょう。それと同時に、大型の英和辞典や日本語の類語辞典を引いてみて下さい。よりこなれた訳語や日本語自体への理解を深めることができます。
 
これらをやってもまだ物足りなかったり、理解が深まらないと感じる場合、それはすでに皆さんが伊伊辞典を使う段階にあるということでしょう。
伊伊辞典は、幸いなことに優れた辞書がオンライン(無料)で利用できます。日常的に使い勝手の良いものから、より詳しく突き詰めたい場合に有用なものまで、自分に合ったものを探してみて下さい。
 
●言語学者サバッティーニ氏らによる辞典は、単語の定義が明確に記されています。
https://dizionari.corriere.it/dizionario_italiano/
 
●言語学者デ・マウロ氏による辞典は、語彙の使用頻度や用法についての区分けがしっかりなされています。
https://dizionario.internazionale.it/
 
●イタリア百科事典Treccani、イタリア語で書かれた百科事典で最も信頼のおけるもので、人名辞典やイタリア語辞書とも連動して検索出来ます。
http://www.treccani.it/
 
●Grande Dizionario della Lingua Italianaイタリア語大辞典。イタリア語辞典のなかでその歴史や信頼度、語彙数においてNo. 1と見なされています。私たちの世代はバッタッリャの辞典と呼んでいました。
http://www.gdli.it/
 
台本研究会の場合、1300年くらいから後に書かれた様々な作家による脚本、詩句を扱います。イタリア詩文学の先人たちの用法を知る上でも助けになるのが以下の辞書です。いずれもオンライン無料検索が出来ます。
 
●言語学者で文人や思想家としても活動したトンマゼーオによる辞典で、過去の文学作品での豊富な用例が非常に助けになります。
http://www.tommaseobellini.it/#/
 
●文献学・韻律学における第一人者ベルトラーミが中心になって編纂する辞典で、文献学からみた情報が盛り込まれています。
http://tlio.ovi.cnr.it/TLIO/

森田学

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