活動報告

2020.06.10
◆ イタリア・オペラのセリフは韻文で書かれている

 みなさん、こんにちは。「イタリア・オペラのセリフは韻文で書かれている」はもはや私の口癖のような感がありますが、オペラの字幕だけに集中してオペラを鑑賞したり、対訳の意味だけを追いかけて歌の練習をしていると、イタリアのオペラ作品が本来備えている美しさを聞き逃してしまうことになります。
 『オペラは脚本から』(明治大学出版会)の著者、辻昌宏さんは、(ラ・ボエームの)ミミが最終幕で Son bella ancora? (私まだきれい?)と訊くと、ロドルフォがBella come un’aurora (朝焼けのように綺麗だよ)と答える場面では、「アンコーラ(まだ)」と「アウローラ(朝焼け)」がせつなく響くだけでなく、(歌声・音が)心に刻まれる、と「あとがき」で書いています。このようなミューズによってもたらされたかのような神々しいフレーズであっても、そこには詩人の技が巧みに用いられているのです。
 オペラは造形美術のように目の前に作品が形として存在しているわけではありません。オペラの作者が残してくれた楽譜や台本(場合によっては演出指南書)を手がかりに演奏者を中心として再現してはじめて鑑賞することができます。オペラにおいて登場人物たちが口にするセリフがどのような技法で書かれているのか。さらにはそれがどのような作曲技法で音楽化されているのかを、この会では探求して行きます。

森田学

Novità